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とに注目すべきであろう。土地そのものに課せられる固定資産税は財産の所在地で課税するので、国際化の影響はさほど大きくはない。地方税における消費課税も量的ウェートが小さいうえに、消費国にのみ課税権を認める仕向地原則が国際的に承認されている。しかし日本の地方税はアメリカやイギリスの場合と異なって税目数が多く、かつ所得税(個人住民税・法人住民税)や収益税(事業税)のように個人・企業を対象とした所得課税が大きな割合を占めている。しかも所得課税の賦課徴収は地方自治体が行なっているものの、その課税ベースは国税のそれと同一であり付加税として性格をあわせ持っている。このため国際化に伴って他の国にはない種類の摩擦が地方税の分野においても生じる。
小論のテーマは「国際化と日本の地方税」であるが、新しい議論の枠組みを提示するものでも学問的な原則論から将来を展望するものでもない。むしろ地方税法や二国間租税条約等に定める賦課及び徴収の適正な確保という見地から、さしあたり事実を把握し問題点を明確にすることに小論の目的がある。租税論の見地からのあるべき国際課税制度の検討なり、外国人等の権利や産業空洞化間題といった観点からの本格的研究のよすがとなれば幸である。第2節では主に外国人等及び外国法人に対する地方税の仕組みと現状を概観する。第3節では経済の国際化に伴う地方税の諸問題を網羅的に検討してゆく。最後に第4節では考察と若干の方向づけを試みたい。
2.外国人等・外国法人に対する地方税
個人住民税の納税義務と課税所得
日本では自国の居住者(内国法人を含む)については居住地主義を採用し、全世界から得た所得を対象にしているが、非居住者については源泉地主義を採用し、自国内に源泉のある所得のみに課税している。居住者の地方税については移転価格税制に伴う地方税還付間題及び外国税額控除とが焦点となるが次節で触れる。ここでは非居住者(外国法人を含む)に対する地方税の仕組みを整理しておく。焦点となるのは外国人の国内源泉所得を課税客体とする個人住民税ならびに外国法人の国内源泉所得を課税客体とする事業税・法人住民税とで

 

 

 

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